産後と鍼灸
肩こりや腰痛など運動器疾患のための治療とイメージされがちな鍼灸ですが
東洋医学的な鍼灸治療は本来、心身全体を整え、
その人の持っている治癒力を回復させるための調整治療であり、
内科的な調整を主とする治療体系を持っています。
女性特有の婦人科疾患ももちろん治療対象となります。
妊娠前(非妊娠期)
- 月経前症候群(PMS)
- 生理痛(月経困難症)
- 生理不順
- 子宮筋腫
- 不妊症
- 不育症
など
妊娠中
- 安産に向けての調整
- つわり
- 腰痛、恥骨痛、股関節痛等
- 妊娠中毒症の予防
- 便秘
- 頻尿
- お腹が張る
- 逆子の予防、治療
- 風邪の予防、治療
など
妊娠前あるいは非妊娠期の治療や
安易に薬に頼りたくない妊娠中の体調管理にも最適です。
さて、産後のケアにも鍼灸治療が有効なことはご存じでしょうか。
なお、上記は心身一如(心と身体はひとつ)という東洋医学的身体観に基づいて 診断し治療する東洋医学的鍼灸のお話です。 現在主流の現代医学的(症状別・病名別治療)鍼灸はこの限りではありません。
*産後の骨盤矯正よりも大切なケア
産後のケアといえば骨盤矯正を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「産後の骨盤矯正」というコースを態々作っている施術院も少なくありません。
妊娠に伴い骨盤は大きく広がり、産後元に戻ってゆきますが、
充分に戻らない場合が少なくなく、
その場合、様々な不調につながる構造的な原因となるからです。
しかし、骨盤矯正よりも前にすべき大切な調整があるのです。
それは内科的な調整です。
産褥期と鍼灸
妊娠・出産によって女性の身体は大きく変わります。
その大きな負担のかかった心と体が妊娠前の状態に戻るまで6~8週間かかると言われます。
この期間のことを産褥期(さんじょくき)と呼ばれます。
古くから言われる「産後の肥立ち」ですね。
この産褥期、骨盤の状態はと言えばユルユルです。
骨盤の矯正(瞬間的な圧力をかけての矯正)は出産によって緩んだ骨盤の構成が
ある程度硬くなっているからこそできるもので、
産褥期には基本的にできないのです。
産褥期には
- 子宮復古
妊娠中大きく広がっていた子宮が元の大きさに戻る - 悪露(おろ)の排出
出産に伴い傷ついた産道や子宮からの出血を含む分泌物、悪露(おろ)の排出
などを経て母体が回復していくわけですが、その回復の速さは人ぞれぞれです。
では、その「産後の肥立ち」は人によって何故違うのでしょうか。
それはそれぞれが持っている治癒力の違い、治ろうとする力の違いです。
潜在的に持っている治癒力の大きさと、
妊娠前・妊娠中のケアの如何に関わっています。
帝王切開による出産の場合は上記の状態とは違いますが
手術による身体への侵襲や手術に伴う出血などが身体へのダメージとなります。
では、産後、産褥期を過ぎるまでは何も治療はできないのでしょうか。
いいえ、それこそ鍼灸治療の出番です。
東洋医学的な鍼灸治療は心身全体の調整治療であり、
その人それぞれの体質・病態・体力・体調に応じる繊細な治療ですので
妊娠前、妊娠中、そして産後までどのタイミングでも治療を受けることができるのです。
電気鍼、トリガーポイント鍼など現在主流の現代医学的鍼灸はこの限りではありません。
産褥期のトラブル
産後は、体力の消耗、ホルモンバランスの変化、
出産時の出血や授乳による血液不足などを原因として、様々な症状が生じやすくなります。
〇免疫力低下にともなう感染症
産褥熱
腎盂炎
※産後は膣・子宮・外陰部などに傷が多く、感染しやすい。
乳腺炎
※乳管からの感染によるものと母乳の乳腺内での停滞によるものとがある
〇ホルモンバランスの変化 栄養不足に伴う症状
乳汁不足(母乳の出が悪い)
詳しくは→ 乳汁不足と鍼灸
産後うつ
〇その他の諸症状
- 悪露がいつまでの続く
- 悪露がいつまでも赤い
- 排尿時痛
- 抜け毛が多い
- 疲労・倦怠感
- めまい
- 高血圧
などなど
東洋医学的考察
○肝虚熱証
- 発熱
- 頭痛
- めまい
- 不眠
- 目の痛みや眩しさ
- 精神異常
- 高血圧
など、産後生じやすい症状は、
出産によって多くの血が失われた肝の陰虚(肝虚)から生じる熱(虚熱)が
上焦(上半身)に停滞することで生じると考えられます。
○肝虚実熱証
肝虚に伴う熱が多すぎると肝虚実熱証となります。
症状自体は肝虚熱証と同様
○脾虚肝実証
肝虚実熱証が長引くと瘀血(おけつ、血の停滞)化し、病が固定化しやすくなります。
同時に相対関係にある脾胃が弱ります。
肝虚の症状+消化器系の不調、並びに陽気が発散されないために鬱症状が生じたりします。
○肝虚陽虚寒証
逆に元々体力がなく、虚熱が発生しない人は肝虚によって冷えの傾向が強くなり、
- 下痢
- 食欲不振
- 腹痛
- 不眠
- 頭痛
- のぼせ
- めまい
- 子宮脱
- 気力低下
- 気鬱
などの症状が出やすくなります。
上記のように東洋医学的には、産後の病症は肝虚(血の不足)や肝実(血の停滞)を中心に
捉えることができます。
気血をスムーズに巡らせる肝の機能低下により、悪露の排泄に悪影響を与えたり、
肝虚には腎虚が含まれるので、下半身の弱化、気力・集中力の低下、疲労、抜け毛などの
症状が出てくることもあります。
精神的ケアにも鍼灸
古くは産後の床上げは産後一月と言われ、布団はその間敷きっぱなしだったとか。
三世代同居や隣近所との絆が強かった時代、色々と助け合えたことでしょう。
核家族化が進み、隣近所との縁も薄くなった昨今では、
育児の負担はお母さんひとりの背中にのしかかってしまうことがが多いかも知れません。
特に理想の母親像を持っていたり、周囲からの期待に応えようとしてしまちがちな
生真面目な思考習慣を持っている方の場合、
精神的に疲れてしまうケースも少なくないでしょう。
しかし、ストレス要素に対する「ストレスの感じ方」は
心身の充実度によって変わってきます。
気力・体力が充実してくればストレスはストレスでなくなっていく、
少なくとも軽くなっていくことでしょう。
東洋医学的な鍼灸治療は、心と体両面に働きかける心身まるごとの調整治療ですから、
内科的なトラブルにも精神的なトラブルにも対応することができます。
結果として
〇悪露の排泄が促進される
〇子宮復古が順調に進む
〇蝶形骨・視床下部の調整によりホルモンバランスが整う
○鬱的な気力の低下の予防となり、また治療となる
など健康度が回復してきます。
産後の肥立ちをより良く、より早くなるよう整え、
心身の健やかさを取り戻し、
赤ちゃんとの新しい暮らしを大変でも楽しい毎日にしてみませんか?
産後、何か不調を感じている方はもちろん、
リフレッシュしたい方も、お気軽にご相談下さい。
全力でサポートさせて頂きます。
※骨盤の矯正はお身体の状態に応じて適宜提供致します。
別料金は要りません。
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院長 吉良 淳
はり師・きゅう師(国家資格)
漢方鍼灸臨床研究会認定漢方鍼灸医
日本刺絡学会認定鍼灸師
FTPピラティス認定ベーシック・トレーナー
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