自業自得と腰痛

自業自得とは

【自業自得】
この言葉を聞いて、どんな意味だとあなたは理解されていますか?
悪いことをしたら、悪いことが身に起こる。
そんな風な意味だと思ってらっしゃる方が多いのではないでしょうか。

しかし、本来はそのような意味ではありません。

自業とは自らの行いのこと。
〇身で行うこと。姿勢・動作・行動など
〇口で行うこと。話すこと。
〇意で行うこと。心で思う、考えること。
三つ合わせて身口意(しんくい)の三業(さんごう)と言います。

どのような姿勢で、どのような動作で、何を行い、何を行わないか。
どのような言葉を選び、どのような口調で、何を言い、何を言わないか。
どのように受け止め、認識し、考え、思い、思わないか。
つまりは、振舞のすべてが業 ということですね。

自得とは自業の結果は自分に返ってくるということ。
自業自得とはその原則を説いている言葉。
「悪い行い」ばかりを想起されがちですが
本来、自業自得に良い悪いはないのです。

つまりは自分の世界は自分が作り上げるものだ、ということ。
自分の世界は自分が作り上げたものだ、ということ。
言い換えると
自分の在り方、その責任の負い方次第で世界は変わる
ということですね。
なんだか希望が湧いてきませんか?



さて、身・口・意と言葉上は三つに分けられますが、
すべては密接につながっています。

例えば、何を話すかは何を思い考えるか、
口業は意業と切り離せません。
またどんな言葉を使い、どんな調子で発したか、
それは自分の心に影響を与えます。

どうせ、だって、自分なんて、すみません・・・
例えば卑屈で消極的、否定的な口癖はそれに相応しい思考回路を固定化させてゆきます。
固定化されたその思考回路がそれに相応しい言葉を選び続けることで
自らを限定し苦しめてゆく、なんてことも日常茶飯事です。

また身業も意業に影響を与えます。
姿勢の如何は脳の働きに影響を与えるからです。

当院ではうつ症状やパニック障害など精神疾患もよく診ますが、
例外なくみなさん猫背で胸を閉じ、呼吸が浅く、
前頭葉のうっ血、血行不良、脳下垂体の下垂などが観られます。
脳神経・血流などのソフトの働きは姿勢という構造、ハードの影響を受けるのです。
「健全な精神は、健全な肉体に宿る(古代ローマの詩人ユウェナリス)」とは
よく言ったものですね。

そうそう、食習慣も身で行うことですから身業に入りますよ。
食べ過ぎは内臓全体を疲労させ、栄養の偏りは感情に影響を与えます。
特に香辛料や甘いものの摂り過ぎには注意が必要です。

【健康】という言葉は【健体康心】の略語。
身体も心も健やかで初めて健康と言えるのです。
身口意の三業を整え、健康を心がけたいものですね。

慢性痛と脳

慢性的な痛みの「感じ方」は脳が作り出すものです。
痛みに執着すればするほど痛みはより大きく強く認識され、固定化されてゆきます。

さらに悲観的・否定的な思考習慣のある方は、
日常的にも余計なストレスを過大に認識して受け取りやすく、
それによって治癒力や免疫力が下がり、結果として症状は慢性化しやすくなります。
加えて何か、自分以外の別の何かに痛みの原因を探すばかりで
自分と向き合おうとしない方、自分と向き合うことを避け続ける方は、
それだけ治りが悪くなりやすいものです。

逆に痛みと向き合う時、痛いかどうか、0か100かではなく、
痛みの質や深さ広さの変化、また動きやすさ、関節の可動範囲、
重心の安定度、視野の変化(広さ・明るさ・鮮やかさ)、呼吸の深さなど
身体全体の変化とともに捉えられる方は、痛みからの解放は速くなります。

さらに楽観的・肯定的な思考習慣のある方は、
日常におけるストレス的要素を上手にいなし、
日常の何気ない恵み、変化に気づき、喜びを見出すこともできるので治癒力も落ちづらく、
加えて自ら治そうという意欲が強く、問題意識を持ってお身体と向き合い、
主体的に行動される方は治癒力も高まるので当然治りも速くなります。

自業自得。
物事との向き合い方ひとつで、世界は暗くも明るくもなるものですね。


慢性腰痛と体の使い方

代表的な慢性腰痛としては、
腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などがよく挙げられますが、
画像診断でそれらしい所見が見られたとしても、
それが果たして本当の腰痛の原因なのかは疑わしいものです。
なぜなら、画像上そのような器質的所見があったしても、
症状のない人は沢山いるからです。

外科手術をしても痛みが改善しない人もほぼ半数と言われ、
よって保存療法、つまりは様子見で済まされる場合が増えています。


痛みの直接的原因は筋肉の硬直に伴う血行不良です。
構造的には仙骨、仙腸関節、股関節、足関節などのズレや可動制限が要因であることが多いですが、
神経を圧迫・絞扼するほど硬直した筋肉が柔らかくなり、血行が良くなりさえすれば
多くの腰痛は改善します。

ただし、
〇身体の使い癖(不合理な身体の使い方)
〇身体の使い癖によって出来た筋肉のアンバランス
(左右・前後・深浅の筋肉の筋力や硬さ・長さなど)
〇アンバランスでも慣れた状態へ戻ろうとする身体の性質(恒常性)
などがいわゆる「戻り」に繋がりますので
治療を積み重ねながら、整えた状態を脳に身体に覚えこませるとともに、
日頃の身体使いを修正してゆくことが大変重要です

当院では、内科的調整(脳・脊髄、自律神経、経絡など)
関節の可動制限・機能障害を引き起こしている筋肉・筋膜・靭帯などの軟部組織の調整
関節の咬み合わせ(アライメント)の調整を行った上で、
そのような構造的問題を引き起こした習慣上の問題点がどこにあるのか、
ご本人の理解が深まるように様々な観点からお伝えし、
且つその改善方法についてお伝えしています。



さて、触診でも理学検査(手技による筋・骨格・神経などの検査)でも異常がないのに
或いは治療をしてのち、そのような異常のない状態になっているのに、
痛みが取れない、ということがあります。

先日もほぼ同じ時期に二人の患者さんにソレがありました。
お二方ともに顕著な動作時痛などはなく、
関節の可動制限もすぐに整う程度、
ただ仰向けから起き上がる時に腰やお尻・股関節廻りが痛んで
さっと起きられない、と言う状況でした。

起床時や長時間同一姿勢からの動き出しに痛む、などは
動き出して血行不良が改善すれば症状は治まります。
要は筋肉の柔軟性を取り戻して血行を良くし、
一部の筋肉だけに負荷がかからぬようにしてゆけば良いだけです。

このお二方の場合は、身体の使い方そのものが痛みの原因でした。
先ず、共通するのは腹筋群が極端に弱いこと。
長年それらの筋肉をほぼ使わずにきたので腹直筋などの浅層筋も
腸腰筋や腹横筋などの深層筋もともに著しく弱いのです。
そして何より問題なのは、それらの筋肉に力を入れようとしても力が入らない、
ずっと使ってこなかったので、どうやったらその筋肉が動くのか、
動かすこと自体が出来ない、働かせ方が分からない、ということす。

骨格筋は随意筋、
本来意志通りに動かせるはずの筋肉、動かせないといけない筋肉、
なのにも関わらず。
動かそうとする目的の筋肉と脳とのつながりがそれだけ弱い薄いということでしょう。

そして腹筋群を使わない、使おうとしないお二方に共通していたのは、
仰向けから身体を起こそうとして腰や背中、お尻に力を入れてしまうことでした。

簡単に言えばお尻の筋肉は脚を後ろに引く筋肉。
腰や背中の筋肉は前に折り曲げた上半身を起こしたり、上半身を後ろに反らせる筋肉です。
想像してみましょう。
上半身を前に折り曲げる腹筋群を全く使わずに、腰や背中・お尻の筋肉を
ギュッとしめたらどうなるか。
そう、海老ぞりですね。

土屋太鳳 海老ぞり写真
土屋太鳳さんの見事な海老反り。

海老反り 女性 ヨガ

上の写真のように海老反りになるための筋肉の使い方を、
仰向けの状態で行って果たして起き上がることができるでしょうか。
もちろん、できません。
出来る筈がありませんよね。

起き上がれないように身体を使っているから起き上がれない。
でも、起きたい~!と同じ筋肉の使い方でさらにギュッと力を込める。
「痛い!」
そりゃそうですよね。
前に進みたいのにギアをバックに入れ、且つ後ろが壁の状態で
力いっぱいアクセルペダルを踏んでいるようなものですから。
その痛みは、その使い方間違っているぞと身体が教えてくれているのです。

自業自得。
自分の身体の使い方が痛みを引き起こしている。
自業自得。
ならば、痛みの生じない適切な身体の使い方をすれば良い。
(※痛まないようにどこかを庇ってごまかして動く、という意味ではない)

無意識に無駄な力を入れてしまう癖を自覚し、これを止め、
同時に今まで適切に使ってこなかった筋肉を使ってゆく。
そうやって身体の使い方のプログラムの組み直しを進めてゆくのです。

間違った筋肉の使い方を改め、使うべき筋肉を使うには、
脳とその筋肉との神経的なつながりを強化してゆくことが必要ですから、
ある程度時間はかかりますが、それは取り組み方次第でなんとでもなるでしょう。

また年齢を言い訳に鍛えることを避けたがる方も少なくありませんが、
筋力も何歳になっても鍛えることができます。
できることからコツコツと積み重ねてゆきましょう。

「自分なりに頑張っている」という方もいます。
その何かに取り組む意欲そのものは素晴らしいことです。
ただしその「自分なりに」というのがなかなかのクセモノ。
多くはこれまでの自分の感覚で楽だと感じる方法でやってしまいます。
いわゆる我流ですね。

例えば、ウォーキング。
「歩くことは健康に良いから」と歩き始めても
普段の歩き癖のまま歩く量を増やせば、その歩き方で使う筋肉をより使うだけですから、
使えていない筋肉との筋力のアンバランスはより広がってきます。

膝とつま先の向きがずれた歩き癖があるなら膝などの関節を痛めることもあるでしょう。
お尻を鍛えようと思ってウォーキングを始めても、
股関節から大きく脚を動かすことなく
腰を丸めお尻を落とし、膝を曲げてちょぼちょぼ歩く癖のまま歩くなら
お尻や太ももの裏側の筋肉が鍛えられることはないでしょう。

不合理な間違った身体の使い方や良かれと思って取り組んでいる間違った努力。
自分ではなかなか気づけないものですが、
身体に悪影響を与えている様々な原因を知ることがとても大切です。
治療を受ける、人に診て貰う機会の大きな利点は
自分の身体への理解を深めてゆく、そこにこそあるのではないでしょうか。

自分の身体に最も影響を与えているのは
何より普段の自分の習慣、自分の身体をどう扱っているか、
なのですから。

慢性的な痛みをとにかく「抑えよう」「消えさえすれば良い」と思っているあなた。
それ自体が根本的な治癒を遠ざけ痛みを慢性化しているかも知れません。
そろそろ、症状という身体からの声に耳を傾けていませんか?

【基本情報】
根本治療専門
鍼灸治療院きさらぎ
兵庫県加古川市野口町野口431-3
TEL 079-421-9353

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